電気革命 モールス、ファラデー、チューリング デイヴィット・ボダニス 吉田三知世 訳

モールス信号からコンピュータ、生命の体内に走る電気信号などが難しい計算式なしで分かりやすく解説され、電気の科学技術の発展に関わった人々のドラマもあり、解かっているようで解かってなかった電気のことが学べる面白い本。

モールス信号

皆が知ってるモールス信号ですが、電信を作ったのはジョセフ・ヘンリーという学校の教師だそうです。生徒たちが授業に飽きないように、当時科学雑誌に載っていた電磁石を応用して作りました。
売れない画家モールスはこの電信を使って大儲けしようと思い、特許は取らない主義の優しいヘンリーから電信について教わってモールス信号を作り、勝手に自分の名前で特許を取ってしまいます。
でもモールス信号は世界中に広まりましたね。
私はジョセフ・ヘンリーをこの本を読むまで知りませんでした。

電話

アレクサンダー・グラハム・ベルが恋人の為に電話を作ったという話は聞いたことありますよね。私も何となく聞いたことがあります。彼は聾啞者(聴覚障碍者)に話し方を教える教師で生徒のメイベルさんに恋をします。彼は科学者ではありませんが親も難聴だったので、子供の頃から音を相手に伝えるということを考えていました。
電話の研究は他にも多くの人が研究していて、ベルも最初は他の研究者と同じように複数の音叉を電信に繋いで言葉を再現しようとしましたが、この方法ではダメだと気づき、音の振動を信号に変える”マイクロフォン”を作って、電話を完成させました。

この電話をエジソンは改良して長距離でも問題なく話せるようにしましたが(ベルが開発した最初の電話は距離が数百メートルになると信号が弱まって伝わらない)エジソンも難聴だったとは知りませんでした。ピアノの音をしっかり聴くには、歯で木の棒を噛んでその先をピアノにしっかり押し付けないと聴けなかったそうです。

電球・モーター

エジソンといえば電球のイメージが私にはあります。日本の竹を使った話が日本では有名だからかもしれません。”エジソンズ・ゲーム”っていう映画がここら辺の話を扱っていて面白かったです。エジソン役はカンバーバッチ。
電球をエジソンの会社が改良したように、モーターも改良、パワーアップされていき、路面電車も登場します。路面電車の会社は自前の発電所を持っていて、夜間に発電した電気が無駄になってもったいないので、遊園地を始めます。遊園地って路面電車の会社がやってたんですね。
他にもモーターの改良によって洗濯機や電動ミシンや掃除機など、さまざまな家電製品が発明され家事が楽になり、召使いがいなくなりました。労働者階級への差罰は薄まり、労働階級や女性にも投票権が検討されます。 労働階級に投票権無かったんですね…

電磁波

電気は銅線の中(伝導性の物体)しか流れないと思われていましたが何もない中空にも飛んでるんじゃないかとマイケル・ファラデーは考えました。(私の理解力・文章力だとこんな表現ですが、詳しいことはこの本を読んでくださいm(__)m)でもファラデーは高等教育を受けておらず、高度な数学を学んでおらず、自分の理論を数式にできなかったので、この考えはあまり受け入れられませんでした。
そののちジェームス・クラーク・マスクウェルが数式を作って、電気には電場と磁場があって、電磁波は光と同じ速さであるという理論を発表します。この時点ではまだ推測です。

ハインリヒ・ヘルツが電磁波を証明する実験をします。

左の発振器の鉄玉の間に電気をビリビリっと流して、右の共振器隙間の部分(電気マークの所)に火花がチカッとなったら電磁波が届いたよーという実験をして、ファラデーやマスクウェルの理論を証明しました。

じゃあ電信も無線で出来るんじゃないの?ってことで、無線通信ができました。そしてラジオもできます。個から個の通信が、個から複数への通信になりbroadcasting(放送)が始まりました。

レーダー

ハインリヒ・ヘルツは電磁波の実験で、電磁波は伝導性の物体で反射することを証明しました。
ロバート・ワトソン・ワットはこの原理を利用して航空機に電磁波を放射して、その反射で航空機を見つけるレーダーをイギリス軍に提案・開発しました。
しかし、ドイツ軍もさらに高性能のレーダーを開発、その対策としてチャフ(小さいアルミ片をまき散らしてレーダーを妨害)が作られました。ゲームでよく見るやつだ。

コンピュータ

コンピュータの父といわれるアラン・チューリングさん登場です。エニグマの解読で有名ですね。映画にもなってます。”イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密”チューリング訳はカンバーバッチ。
一つの機械で一つの機能が当たり前の時代に、一つの機械で何でもできる万能機械”コンピュータ”を考えたました。機械は変えずにプログラムを書き換えることで別の機能が使えるソフトウェアの概念も考えています。
彼が生きているうちにコンピュータは実現しませんでしたが、トランジスタが発明されて、コンピュータは現実のものとなり、さらに発展し、現在では誰もが肌身離さず小さなコンピュータ”スマートフォン”を持ち歩いています。

感想

最後の章では生命の体内・脳にも電気が流れてるよ、脳が信号を送ってるよって話があります。読んでみてください。(本音は長文になって疲れたので省きました(笑))
科学的な部分は正直全部しっかりと理解できたわけではありませんが、各人物のドラマ部分が良く書かれていて最後まで飽きずに読むことができました。
科学・歴史・有名人の逸話が好きな人におすすめの本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました